探検マイライブラリ
searchclose
shopping_cart_outlined
exit_to_app
Forbes JAPAN フォーブスジャパン

ベストパートナーは、過去!? [4次元オープンイノベーション]

オープンイノベーション。言われて久しいこの言 葉、原稿を書くにあたり、改めて辞書とネット で引いてみました。「組織内部のイノベーションを促 進するために、内部と外部の技術やアイデアなどの 資源の流出入を活用すること」。そして、その外部と は「他社、大学、地方自治体、社会起業家、消費者」 などを指す。

 ふむふむ、よかった。一般的なオープンイノベー ションには、僕らがいろんな方にお勧めして、組むと いいですよと言っている「外部」が入っていない。こ っそりお教えしましょう。その組み先の「外部」とは、 「過去」です。

2014年10月27日、JR東京駅構内に、森永製菓 による期間限定ショップがオープンしました。森永の ハイクラウンという往年のチョコレートの発売50周年 記念ショップ。暖簾がかかる和風のたった2坪の店 舗には、現代にリデザインされたハイクラウンや、有 田・伊万里焼とのさまざまなコラボ商品が並び、JR 東京駅駅舎のドームのデザインの磁器にチョコを詰 め合わせたものは35万円と、何かと話題を呼びました。

 我々も関わったこのショップ。誕生の背景には、 森永製菓の社史があります。創業者の森永太一郎さ んは、佐賀県伊万里市の出身で、若かりしころ、伊 万里焼を売りにアメリカへ出ます。しかし、これがま ったく売れず、公園のベンチで途方にくれているとき、 おばあさんが見たことのないお菓子をくれます。それ はキャラメル。これが美味、かつ栄養にもなる。製 法を学んだ彼は日本へ帰り、東京赤坂に2坪の製菓 工場を立ち上げます。これが森永製菓の始まりです。

 2坪のお店。伊万里焼。おわかりですね。僕らが 組んだ相手は、社史、そして森永太一郎さん、つま り「歴史」とのオープンイノベーションだったのです。 創業115年の森永製菓が、原点に帰りつつ新しいこ とをやる。そのためのショップデザインです。

 次は、現在進行中のものをご紹介。教育界では「主 体的、対話的、深い学び」、通称アクティブラーニ ングが声高に叫ばれていますが、これまた輸入もの の概念。歴史を紐解けば、地域ごとにアクティブな 教育が、日本中で行われていたんです。例えば、わ が故郷佐賀県には大隈重信ほか佐賀の7賢人を輩出 した伝説の名門藩校「弘道館」がありました。

 その教育方針を調べると、これが面白い。「改革 は教育に始まる」という目的で設立。モットーは「自 学自習」。1,000人の生徒が学んでいましたが、先生 はたった10人。それは、学んだ先輩がすぐに後輩に 教えていたからです。特筆すべきは「会読」。四書 五経を読んで議論をするディベート付き読書会です が、ここには鍋島直正公自身も月に1回参加し、無 礼講でディスカッションしていました。当時は「議論 は会津か肥前」と言われ、評判を聞きつけた岩倉具 視は息子を佐賀に留学させたそうです。その後、大 隈重信や副島種臣といった議論に秀でた人材が中央 で大活躍することにつながりました。

 このエピソードで、すっかり弘道館ファンになった 僕は、弘道館の21世紀版「弘道館2」を県に自主 提案。方針は過去からそのまま引き継ぐ。校舎は復 元せず、イベントベースで県内各所でpop-upの藩 校にする。授業はネットでも配信。講師陣は各界で 活躍する佐賀ゆかりの先輩たちに依頼し、21世紀教 育を行う、というもの。維新150周年という時期も味 方し、見事採用され、日本初の、藩校復活型アクテ ィブラーニングとして、毎月授業を実施中です。

 3次元=現代の生きている人々だけじゃなく、時空 を超えて4次元で、歴史、先人、偉人たちと組んだ ほうが絶対面白くなる。そんな、この世にもういない 人たちと組んだ事例、つまり「過去」とのオープンイ ノベーションは、まだまだあります。たとえば塩麹。 ブームの火付け役は、ピンチに陥ったときに、江戸 時代の文献からヒントを得たそう。つまり、業界のご 先祖様と組んだわけです。また、バルチック艦隊を 破った秋山真之は、地元、村上水軍の戦略をヒント に、日露戦争を勝利に導きました。これも地元の先 人たちとのオープンイノベーションですね。

 それって「温故知新」なんじゃないの?と思われる 方もいそうですが、知新だと「知る」までしかない。 やらなくっちゃ、事は起こりません。そして何より、「4 次元」の「オープンイノベーション」のほうが、パッ とするでしょう?

 このやり口を実践すると、3つのメリットがあります。 その1、世界でオンリーワンになれる。歴史はアイデ ンティティー。そこにしかないストーリーがある。つま り、歴史と組んで、現代と地続きにすれば、世界で もその土地、その企業でしかできません。その2、誇 りがもてる、かつ反論が少ない。なぜならば、そもそ もそこでやっていたことだから、風土にも、自分たち にも刻まれている。だから、プロジェクトが進めやす い。その3、お金がかからない。組む予算はほぼゼロ。

「オープンイノベーションは日本では全然進まない」 とか、兎角言われがちですが、「過去」となら、やれ そうじゃないですか? みなさんもぜひ、お試しあれ。 時空を超えて手をつなぐのは、とても楽しいですよ。 そして、我々がやったことを次は未来の人が見つけて、 また4次元でオープンイノベーションがなされたら。 それは最高な仕事になりますよね。

help