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LANDSCAPE DESIGN ランドスケープデザイン

名城公園 TONARINO

街路樹の樹冠に近い2階テラス席。樹齢 の高い樹々が多い公園内では、樹冠を 横から見る視点は少なかった。大津通を 見下ろす都市の桟敷席のような場所

Meijo Park "tonarino-square"

都市とは自然でもある

文=原田真宏(マウントフジアーキテクツスタジオ)

私たちが日常を送っている総合的な意味 での都市環境というと、一般的にはその目 に映る印象から、建築物の集積による人工 的環境が思い浮かぶようだが、実は地形や 植生といった、いわゆるランドスケープと 呼ばれる非人工的環境(=自然)が基底的に 存在している事実は忘れ去られがちであ る。つまり、都市環境の質や魅力とは建築 的環境とランドスケープ的環境の複合に よって構成されているわけだ。たとえば東 京やニューヨークのような極めて人工的開 発の進んだ都市でさえ、そこには武蔵野の 微地形やマンハッタン島の尾根筋(これは ブロードウェイとして残っている)として、 都市に根本的な構造を与えているのであ る。都市環境の質や魅力を考える時、建築 と同時にランドスケープという複数のレイ ヤーで評価し、操作する必要がある、とい うことだ。

この視点から、今回のデザイン対象であ る名古屋を眺めてみると、建築的には極め て合理的かつ高密に機能集積がなされてい ると評価できるが、ランドスケープ的には ほぼ完全に平坦な地形で変化に乏しく、人 為的な格子状の街区構造は全く何のランド スケープによる撹乱を受けることもなく、 のんべんだらりと延々展開されている(地 元の人々が半ば自虐的冗談として語るよう に、全国の都市魅力ランキングで常に下位 に甘んじているが、これはその主たる要因 の一つなのだろう)。

名古屋にはランドスケープ的質が不足し ているのである。その状況下で私たちが行 うべきは、スキのない機能的な建築物を名 古屋の高密な都市環境に更に追加するので はない。ランドスケープ的存在としての価 値を持ち、むしろ建築的にはその密度を下 げ、人為的な機能集積体である都市に人々 が息をつけるスキを与えるような存在であ るだろう、と考えた。

具体的には、街の文化的中心軸としての 発展が期待される大津通と、敷地である名 城公園の境界に沿って、二層の飲食を中心 とした商業ボリュームを配し、高さ方向で の<見る-見られる>関係を生み出す。さ らにこれに直行するようにして、その下部 に公園ランナー向けの施設を含んだ、人々 が座り憩うギャラリーともなる大階段を配 することで賑わいの広場を取り囲み、全体 としてはL字型の人工的な地形として、都 市に立体的な関係性や動線の展開を生み出 している。また、通常では建築としての非 -自然性を印象付けてしまう壁面も、周囲 の既存樹木の枝葉の粗密感や、それらが光 や空気を含む度合いに合わせて仕上げの ピッチを下げ、適切なスキを与えられるこ とで、対立ではなく周囲の名城公園の森に 親和した状態となっている。

いわば人工的ランドスケープとして建築 は整えられたのであり、その建築的印象は 公園の環境の中に馴染み溶け込んでしまっ ている。その結果として、名古屋の都市環 境はランドスケープの質の度合いを上げ、 建築の密度(や緊張)は下げられたのであ る。開発が行き着いた現代都市のデザイン においては、従来のように建築の一方的な 「増大」を志向するよりも、建築/ランドス ケープ比の「調律」として捉えられるべきで はないかと、考えている。

公園内の森の奥に名古屋城が見える
大津通から見る
大階段は広場を見下ろすギャラリーであり、外部の「居場所」を生み出す
植栽イメージ図(作画/大武一伯)

植栽デザイン

話=大武一伯(株式会社いろ葉Design代表)

現場は樹木が鬱蒼と生い茂り、通りから 閉鎖されたような場所であった。通りに開 かれ、建物と外構を樹木でつなげたいとい う原田氏の要望を受け、既存樹を整理し明 るさを確保し開かれた広場を目指した。建 物と外構をつなげるため、建物からも樹木 が身近に感じることができる植栽とし、こ れまで大津通に対して閉じていた東側につ いては、高木による木の存在感と樹間から 垣間見ることができる建物とのバランスを 考慮した。名古屋市の気候に合せた植栽を 施し、四季の移り変わりを感じてもらえる よう配慮している。(文責=編集部)

以前の敷地は鬱蒼と樹々が茂り暗く陰気な印象 であったが、本プロジェクトによって適切にスキ とるように樹々の密度調整を行い、明るく健康 的な公園の玄関口へと転換された。
全体イメージ平面図(作画/大武一伯)

名城公園 tonarino

所在地 愛知県名古屋市北区名城1丁目

運営者 アイ・アンド・シー・コーポレーション株式会社

主要用途 広場・店舗・駐車場 

設 計 【建築設計・外構デザイン監修】マウントフジアーキテクツスタジオ(原田真宏、原田麻魚、野村知良、 武井隆) 【植栽デザイン】大武一伯(いろ葉Design) 【ネーミング・ロゴ・サイン】日本デザインセン ター(三澤遥、杉本瑞樹、吉澤あずさ、是方法光)

施 工 【建築】木下建設名古屋支店 【外構】中部土木株式会社、岩間造園株式会社

仕 様 舗装/透水アスファルト サンドブラスト工法、透水性平板ブロック(オーシャンハイスルー/太平洋プ レコン工業)、蓄光舗装材、石材/蛭川錆御影石、外装/サイプレスデッキ材、再生木デッキ(ハン ディウッド/ハンディテクノ)、ネットフェンス溶融亜鉛メッキ処理(PCフェンス/朝日スチール工業)

竣 工 2017年4月

規 模 対象計画面積7,380㎡( 公園敷地面積165,122㎡)

植 栽 <既存樹> ケヤキ、クスノキ、ヒマラヤスギ、マツ、ヒラドツツジなど <新植樹> ケヤキ、コブシ、カ ツラ、シラカシ、サルスベリ、イロハモミジ、シマトネリコ、ヒラドツツジなど

名城公園(北園)営業施設等事業提案コンペ概要

平成24年6月に策定・公表した「名古屋市公園経営基本方針」に基づく具 体的な取り組みを効果的に推進するために、翌25年7月に「名古屋市公 園経営事業展開プラン」を策定。この事業展開プランでは、今後10年間 で優先的に取り組むべき課題と戦略、個々の戦略にかかる主な取り組 み内容と事業スケジュールを示している。市民にとって、楽しみながら 生きがいを見つけられるような、より身近な場所として、また事業者に はビジネスや社会貢献の場として公園を活用してもらう機会が増える よう、行政が市民や事業者の公園経営への参画をサポートするととも に、協働のコーディネートに取り組むことを目的としたものである。 これら「名古屋市公園経営基本方針」、「名古屋市公園経営事業展開プラ ン」に基づき、民設民営にて整備を進めるべく営業施設等の事業提案者 を公募する事業プロポーザルを開催した。そして、中部土木株式会社を 代表に、岩間造園株式会社と株式会社マウントフジアーキテクツスタジ オ一級建築士事務所により構成されたグループによる提案が最優秀に選 定され、実施された。

選定においては、『公園利用者とともに育みながら、成長していく名城公 園』という全体コンセプトのもと、「食」「体」「集」「緑」をバランスよく取り 入れた提案であることが決め手となった。加えて石垣ゲートなど名古屋 城のイメージに即したエントランスなど大津通からの景観に配慮されて おり、またウッドデッキの階段やテラスなど、公園の新しいランドマー クとなることが期待できるとして高評価を得た。さらに備蓄倉庫や太陽 光発電による蓄電など、災害時における運営計画も高く評価された。

事業期間は最長20年(当初10年で、以降10年を上限に更新可能)である。

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